日本社会に馴染んだ「甘え」の文化

土井健郎氏は著書「甘えの構造」の中で、幼児が母親に甘えるのが「甘え」の原型であり、母親が他者に注意を向けると幼児はそれに対して嫉妬すると分析する。幼児は甘える相手に対して受身的、依存的であり、相手は自分の意のままにならないから、容易に傷つきやすく、干渉されやすい。

「甘え、甘やかす」文化は日本社会の潤滑油であり、日本人の精神構造を理解する鍵になると土井氏は述べている。土井氏によると、人間関係を表す多くの日本語が、「甘え」と関係している。子供はよく「すねる」が、すねるのは素直に甘えられないからそうなるのであり、しかしすねながらも相手を意識しながら甘えている。また、「ふてくされる」「やけくそになる」というのはすねた結果起きる現象で、「ひがむ」のは自分が不当な取扱いを受けていると曲解することである。「ひねくれる」のは、甘えることをしないで却って相手に背を向けることであるが、それはひそかに相手に対し含むところがあるからである。したがって、甘えないように見えて、根本的にはやはり甘えている。「うらむ」のは、甘えが拒絶されたことによって相手に敵意を向けることで、この敵意は憎むという場合よりも、もっと纏綿としたところがあり、それだけ密接に甘えの心理と関係している。

外との交渉を断ち、大人になることを拒む引きこもりや、暴力に走る子供たちは、「甘え」を素直に表現することができず、極端に内向化したり、外に向かって人を傷つけたりする。自分の思う通りに行かないのが人生である。人はそれを努力して乗り越えたり、寛容を学んだり、苦に甘んずるなどといったことを成長とともに学んでいくものだが、物質的に豊かになり、精神的な「甘え」が許容される日本社会において、それはますます難しいのかも知れない。

(編集・望月 凛)

(轉載大紀元)

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